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最後の最後で衝撃の事実を突きつけられる|2017年壱岐ウルトラマラソン完走記 第7話

2019.04.26 / マラソン

第1話からはこちらから

 

お前の思いは俺がゴールに届ける

筋肉系トラブルを避けるために引き続きペースを落として進みます。

もうタイム的には歩いても制限時間には間に合います。でもここまで出し切ったレースで最後の最後だけ楽をしても、フィニッシュ後に素直に喜べません。

急坂は歩き、緩い上りや下りは頑張って走ります。

そんなこんなで90kmまできて、あと10kmとこの長かったレースを感慨深く振り返っていると、前を走っていた女性の選手が急に脚を引きずり出し、遂には止まってしまいました。

ちょうど医療スタッフを乗せた車がすぐ後ろについていたので、即座に駆け寄ります。

看護師さんが診た瞬間「止めましょう。」と。

ここまで90km走ってきて、もうあと少しでゴールなのに、、、ここでリタイヤ。

自分のことのように悲しかったです。

その女性はさっき僕が脚を痛めて電柱に寄りかかっている時に「ファイト!」と声をかけてくれた方でした。

少し目があったので僕は何も言わずにコクリと頷きます。

あなたの無念は俺がゴールに届ける。その思いでした。

名前も知らない、けどここまで90km一緒に走った戦友です。

 

最後にして最大の登り

90kmの登りが終わるとこの100km中最後にして最大の登りが立ちはだかります。

これをここに持ってくる事自体、コース考えた人はドSです。。

朝5時から始まったこのレースもこの時点で約12時間と少し経過し、天気も悪いこともあって徐々に薄暗くなります。

そんな中を地元の消防士さんがコースをライトで照らしてくれて、長く苦しかった今日の終わりを感じる。

最後のこの登りも、急坂は歩いて緩いところは走るという作戦です。

脚の筋肉に気をつけながら、ゆっくり確実に登っていきます。

登りきるとダムがあり、その脇にこのレースの最終エイドステーションが見えました。

思えばこの雨風の中、ボランティアさんも大変だったろうなと。

しかも休みの日なのに一生懸命サポートしてくださって。ボランティアさんには感謝しかありません。

もうスポーツドリンクなどの甘いものは胃が受け付けないので、水だけ飲んで精一杯の感謝を伝えてリスタートです。

ゴールまで残り4km。下って少しのアップダウンを耐えれば念願のゴールです。

 

最後の最後で衝撃の事実を突きつけられる

2kmの下りも慎重に慎重に下っていきます。

それを過ぎるともう残りわずか。

最後の登りの途中で、その衝撃の町内放送が流れました。

「台風接近のため明日のフェリー・ジェットフォイルの全便欠航が決まりました。」

衝撃的すぎて笑いました。ここまで98km走ってきて、最後の最後にその事実を突きつけるのかと。

でももう欠航なのは仕方ありません。宿を延泊出来なかったら台風の中、外に放り出される感じですが、もうそれも今はどうでもいい。

残り2km。最後の最後までドSなこの壱岐ウルトラマラソンを絶対倒してやる。

 

100km

最後のアップダウンも過ぎて、いよいよゴールまで数百メートル。

朝のスタート時に通った長いトンネルを進みます。

トンネルの先からはゴール地点の賑やかな声がここまで聞こえてきます。

本当に、本当にゴールできるのか?!トンネルということもあってゴール地点が見えないので、自分でも実感のわかないまま進みます。

そしてトンネルと抜けると「お疲れ様〜」「あと少し」「ファイトファイト」と沿道の人が声をかけてくれます。

本当に、本当にゴールなんだ。俺、100km走ったんだ。

そう考えると涙が止まりません。

強風に煽られ、砂粒に痛めつけられ、波もかぶったこのレース。

あと100m、50m、10m。

ゴーーーーーーール!!眼の前にあるゴールテープを両手で持ち、「シャァーーーーーーー!!!」叫んでいました。

間違いなく人生で一番疲れたこの2017年10月21日。

13時間34分14秒をかけた100kmの道のりの終わりです。

 

つづく

(次がラストです)