2019.04.26 / マラソン
筋肉系トラブルを避けるために引き続きペースを落として進みます。
もうタイム的には歩いても制限時間には間に合います。でもここまで出し切ったレースで最後の最後だけ楽をしても、フィニッシュ後に素直に喜べません。
急坂は歩き、緩い上りや下りは頑張って走ります。
そんなこんなで90kmまできて、あと10kmとこの長かったレースを感慨深く振り返っていると、前を走っていた女性の選手が急に脚を引きずり出し、遂には止まってしまいました。
ちょうど医療スタッフを乗せた車がすぐ後ろについていたので、即座に駆け寄ります。
看護師さんが診た瞬間「止めましょう。」と。
ここまで90km走ってきて、もうあと少しでゴールなのに、、、ここでリタイヤ。
自分のことのように悲しかったです。
その女性はさっき僕が脚を痛めて電柱に寄りかかっている時に「ファイト!」と声をかけてくれた方でした。
少し目があったので僕は何も言わずにコクリと頷きます。
あなたの無念は俺がゴールに届ける。その思いでした。
名前も知らない、けどここまで90km一緒に走った戦友です。
90kmの登りが終わるとこの100km中最後にして最大の登りが立ちはだかります。
これをここに持ってくる事自体、コース考えた人はドSです。。
朝5時から始まったこのレースもこの時点で約12時間と少し経過し、天気も悪いこともあって徐々に薄暗くなります。
そんな中を地元の消防士さんがコースをライトで照らしてくれて、長く苦しかった今日の終わりを感じる。
最後のこの登りも、急坂は歩いて緩いところは走るという作戦です。
脚の筋肉に気をつけながら、ゆっくり確実に登っていきます。
登りきるとダムがあり、その脇にこのレースの最終エイドステーションが見えました。
思えばこの雨風の中、ボランティアさんも大変だったろうなと。
しかも休みの日なのに一生懸命サポートしてくださって。ボランティアさんには感謝しかありません。
もうスポーツドリンクなどの甘いものは胃が受け付けないので、水だけ飲んで精一杯の感謝を伝えてリスタートです。
ゴールまで残り4km。下って少しのアップダウンを耐えれば念願のゴールです。
2kmの下りも慎重に慎重に下っていきます。
それを過ぎるともう残りわずか。
最後の登りの途中で、その衝撃の町内放送が流れました。
「台風接近のため明日のフェリー・ジェットフォイルの全便欠航が決まりました。」
衝撃的すぎて笑いました。ここまで98km走ってきて、最後の最後にその事実を突きつけるのかと。
でももう欠航なのは仕方ありません。宿を延泊出来なかったら台風の中、外に放り出される感じですが、もうそれも今はどうでもいい。
残り2km。最後の最後までドSなこの壱岐ウルトラマラソンを絶対倒してやる。
最後のアップダウンも過ぎて、いよいよゴールまで数百メートル。
朝のスタート時に通った長いトンネルを進みます。
トンネルの先からはゴール地点の賑やかな声がここまで聞こえてきます。
本当に、本当にゴールできるのか?!トンネルということもあってゴール地点が見えないので、自分でも実感のわかないまま進みます。
そしてトンネルと抜けると「お疲れ様〜」「あと少し」「ファイトファイト」と沿道の人が声をかけてくれます。
本当に、本当にゴールなんだ。俺、100km走ったんだ。
そう考えると涙が止まりません。
強風に煽られ、砂粒に痛めつけられ、波もかぶったこのレース。
あと100m、50m、10m。
ゴーーーーーーール!!眼の前にあるゴールテープを両手で持ち、「シャァーーーーーーー!!!」叫んでいました。
間違いなく人生で一番疲れたこの2017年10月21日。
13時間34分14秒をかけた100kmの道のりの終わりです。
つづく
(次がラストです)