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死んでも完走してやる|2017年壱岐ウルトラマラソン完走記 第6話

2019.04.25 / マラソン

第1話からはこちらから

 

清石浜をなんとか越えて、ヘロヘロ状態で走り続けます。もう体力的にはとっくに限界です。

それでも、脚が前に出る限りゴールに近づく。

そのことだけを考えて進んでいきます。

正直、ここから先の記憶が曖昧です。

 

死んでも完走してやる

56km地点 左京鼻、66km地点 原の辻ガイダンスを越えて、75km付近から始まる周回コースの入り口まで、無心で走っていました。

記憶があるのはこの限界状態での約8kmの周回コースを目の前にしたとき。

早い人はもう周回を終えて先に進んでいます。僕とのタイム差は1時間くらいあるでしょうか。

その事実に絶望しつつ、とくかく前に歩を進めていきます。

周回コース終わり付近の筒城小学校、ここでは軽食なども用意された比較的大きなエイドステーションが設けられていて、僕も少しだけ休むことに。

パイプ椅子に腰掛けて、もう限界を迎えている膝を誤魔化すために塗るタイプのロキソニンを大量に塗りたくります。

その他の参加者もぐったりとうなだれている人が多かったです。

そりゃそうです。台風前のこの強風と雨の中、この時点で82km走ってきているんです。

僕もうなだれたかったですが、制限時間を考えるとゆっくりも出来ません。

ロキソニンを塗り終え、補給をしたら覚悟を決めてエイドステーションをあとにします。

残り18km。

ハーフマラソンより短いから大丈夫。

ゆっくりでも走ることができれば時間的にも完走できる。

もう根性とか気合とかこの段階では関係ないです。

無心で前に進むのみ。死んでも完走してやると考えていました。

 

 

最大の危機

前に進む限り残り距離は確実に減っていきます。

限界の限界の限界を耐えているこの状態、でも脚は前に出ます。

86km付近で少しアップダウンがありました。

普段ならスピードを落とすこと無く登れるほんの200mほどのゆるい坂道。でも今はそんな坂でも走れません。

歩いて上り、下りになったら走り出します。

そして下りきる直前、太もも裏の筋肉(ハムストリングス)が経験したことのない痛みに襲われます。

想定していた最悪の事態です。起こった瞬間痛いとかよりも「終わった」と思いました。

疲れていても脚が前に出る限りフィニッシュには近づきます。

でも、肉離れなどの筋肉系のトラブルは即その場でレース終了を意味します。

残り距離が1kmだったら這ってでもゴールに向かいます。でもあと14kmは無理です。

ひとまず近くにあった電柱に寄りかかり、脚の状態を確認します。切れてたら終わり。この86kmが無意味になる。

恐る恐る脚を伸ばします。すると少しずつ痛みがひいていきます。

良かった、なんとか肉離れではない。

86kmも走ったのも人生初です。信じられないくらいの痛みでしたが、肉離れではなく筋肉が攣っただけのようでした。

電柱に寄りかかっている間に何人かのランナーが抜いていきます。

皆さん「ファイト!」「頑張れ!」「大丈夫か!?」など、自分たちも限界を迎えて苦しいはずなのに、まったくの他人の僕に声をかけてくれます。

ここまでくるともう順位とかは関係ないです。ランナー皆、同志です。

その声に力をもらい、痛みの残る脚でリスタートです。

残り14km。筋肉系トラブルを避けるために、更にペースを落として前に進みます。

 

 

つづく

(不定期更新です)